産業保健コラム

河合 早苗


所属:

専門分野:精神医学(産業精神医学)

コロナが教えてくれたこと ~ソーシャルディスタンス考~

2020年8月3日

自粛生活の中、多くの企業が在宅勤務を開始した。自粛後も自衛手段として‘新しい生活様式’が提案され、在宅勤務を続ける所も少なくない。
嘱託産業医の仕事もZoom、Skype等を使った活動となった。この歳になると何やらおさまりが悪い。反応が直に来ないことに対してのストレスを感じていたが、慣れてくると逆に通勤しなくてもいい、着替えなくてもいい(映る上半身はきちんと着替える)とメリットを感じていた。

 

社員さんの中にも在宅で活き活きとしている方も多い。いつも緊張している人も自分のテリトリーにいるせいか、画面の中で笑顔が多く、リラックスしていることがわかる。
「在宅っていいですね。通勤もないし、気を遣わなくてもいい。愛想笑いもしなくていいし自分のペースで仕事ができて効率がいいと思う」ソーシャルディスタンスがとれることでストレスが軽減している人たち。

 

実際に企業でも在宅勤務を実施した結果、生産性が上がると判断し在宅中心でと働き方を見直すことになった所もある。出社する人数が減ればフロアも小さくできる、固定費が削減できるなどのメリットもあるだろう。
一方で在宅勤務に慣れない人達も。家では集中できない、相談しにくい、顔が見えないと会議にならない等。人との距離感が遠くなることでストレスを感じる人たち。

 

いずれの人たちも今後コロナと共存する生活で少なからずストレスを感じ、体調を崩す人が出てくるだろう。
在宅に慣れた人が出勤を再開したら?元々嫌だと思っていた職場にまた行かないといけない、これまでは仕事の仕方は選択肢がなかったが、在宅勤務というツールを手に入れたことにより我慢できなくなってしまう人も出てくるのでは?
逆に在宅を続けることで人との繋がりを感じられず孤独感を抱く人もいるだろう。

 

筆者は出不精。自粛生活はストレスなく受け入れているが、クリニックでの診療は普段通りだった。危険を感じつつ、いつもの距離感で人と触れ合う時間もあったからバランスがとれていたのかもしれない。
人との距離感というのは常にストレスの元、とコロナが再度教えてくれた気がする。

河合 早苗