産業保健コラム

篠原 耕一


所属:社会保険労務士法人 京都綜合労務管理事務所 所長

専門分野:労働安全衛生関係法令・労働基準関係法令

新たな熱中症対策に倣う二次災害の防止

2026年2月2日

 新年度に向けて、これから4月に新卒で入られる新入社員の皆さんを対象とした安全衛生教育の予定が少しずつ入ってきます。
 毎年、新入社員のみなさんには、学生時代に仲の良かった友人達とは段々と疎遠になっていくという悲しいお知らせとともに、働くことを通じ職場の同期をはじめ、たくさんの素晴らしい出会いがあるという嬉しいお知らせも同時にし、「職場の仲間は、命懸けであなたのことを助けにきます。」ということをお伝えしています。

 

 職場で起こる労働災害は、時に二次災害を伴います。感電している仲間を助けようと身体に触れ感電したり、高所から墜落した仲間を地上で受け止めて負傷したり、特に酸素欠乏・硫化水素発生場所における二次災害では、仲間を助けようと被災場所に次々と飛び込んだ同僚が複数被災する例が毎年発生しています。

 

 二次災害の防止のための措置として、昨年、令和7年6月1日から義務化された、新たな熱中症対策が参考になります。熱中症による死亡原因の多くは、「初期症状の放置」と「対応の遅れ」によるものであることから、その内容は、直接的な熱中症の防止対策ではなく、
 (1)熱中症が重症化して生命の危険にさらされないよう、「自覚症状が
   ある本人」や「熱中症のおそれがある同僚を見つけた周囲の者」が
   報告するための体制整備及び関係者への周知
 (2)熱中症のおそれがある同僚を把握した場合に迅速かつ的確な判断が
   可能となるよう、緊急連絡網や緊急連絡先所在地等の周知と熱中症
   の重篤化を防止するために必要な措置の実施手順作成と周知
という、熱中症になってしまった者を死なせないための対策となっています。

 

 これに倣い、例えば感電災害の場合は、救助者が感電している被災者に触れることによる二次災害が起こりうることから、
 (1)電源を落として救助させ、これを徹底するための、救助体制の整備及
   び関係者への周知
 (2)感電災害を把握した場合に直ちに停電状態にして救助可能となるよ
   う、必要な措置の実施手順作成と周知

 

 酸欠災害の場合は、被災場所に無防備で飛び込んでいくことによる救助者の被災が多いことから、
 (1)作業者に命綱を使用させ、酸欠・硫化水素発生場所に立ち入らず救助
   させるための、体制整備及び関係者への周知
 (2)酸素欠乏等のおそれがある災害を把握した場合に迅速かつ的確な判断
   が可能となるよう、二次災害を発生させず救助するために必要な措置
   の実施手順作成と周知

 

 など、二次災害防止のための「救助作業の方法」を明らかにし、教育し、遵守させることで、災害時には被災者も救助者も助かることが重要です。

 

 労働安全衛生法第59条は、第1項において「労働者を雇い入れたとき」の安全衛生教育を、第2項において「労働者の作業内容を変更したとき」の安全衛生教育を義務付けており、労働安全衛生規則第35条第1項により、「事故時等における応急措置及び退避に関すること」は、教育事項として義務付けられています。
 自然災害とは異なり、人が起こす災害は、原因を明らかにし、ルールを決め、守り、守らせることで「ゼロ」にできます。
 労働災害の防止はもとより、災害発生時の二次災害防止にも備えて、新年度も「ゼロ災害」を継続してまいりましょう。

篠原 耕一