産業保健コラム

岡本 浩


所属:岡本労働安全衛生コンサルタント事務所

専門分野:健康、安全、環境の分野

事業場における「がん」の発生の把握の強化と自身の経験から思うこと

2025年12月1日

 化学物質を製造し、または取扱う事業場において、1年以内に2人以上の労働者が同種のがんに罹患したことを把握したときは、都道府県労働局長に停滞なく報告する義務が発生する場合があります。「同種のがん」とは発生部位等医学的に同じものと考えられるがんであり、「把握したとき」とは、例えば退職者も含め10年以内に複数の者が同種のがんに罹患したことも含むとの解釈です。退職後の報告については「義務」から「望ましい」の表現に抑えられてはいますが。

 

 定年退職後7年経過した72歳自身のことですが、令和7年2月に人間ドックの結果から「前立腺がん」の判定を受けました。まずは前立腺がんの疑いということで生検をします(結構痛い)。確定診断が下るまで2週間は要します。結果を聞くために名前を呼ばれて診察室に入る時は「死」を宣告されるのではないかとドキドキでした。がんに対する心の不安がピークになったことを覚えています。前立腺がんは骨に転移しやすいことから骨シンチの検査が引き続きあります。ペット検査が全身であるのに対して骨シンチは骨に特化した検査です。レントゲン撮影中に骨全体の画像が横目でよく見えますので不安をあおります。結果判定まで1週間要します。

 

 がんのことを忘れるためと、ホルモン治療による筋力低下を防ぐために趣味の登山を月2回程度継続しました。山登りのしんどさはありますが、すべてのことを忘れて登り下りに集中することでストレスを解消できました。治療方法は自分で手術か放射線かを選択しますが、最先端医療を行っている府立医科大学附属病院の陽子線治療を受けることができました。陽子線照射は12日間の通院で、1回あたり20分程度と短く、これまでの不安を伴う検査とは異なり、希望のもてる治療でした。
 前立腺は生殖器ですので、在職中に化学物質の影響がなかったともいえません。それを把握管理するのは誰か、退職後の自身にとって悩ましいがんの経験でした。

岡本 浩