産業保健コラム

岡本 浩


所属:岡本労働安全衛生コンサルタント事務所

専門分野:健康、安全、環境の分野

リスクアセスメントによる化学物質の自律的管理への移行について

2024年1月4日

 これまで化学物質の管理は有機則や特化則など特別則で規制された管理が進められてきました。しかし、厚生労働省の調査では年間約450件で推移している化学物質による休業4日以上の労働災害(がん等の遅発性疾病を除く)の8割は、規制されていない化学物質によるものとされています。GHS分類ですでに危険性・有害性が確認された約2,900物質すべてについて5年後を目途に自律的管理を完遂させ、労働災害を未然に防ごうとしているのです。リスク評価の実施率が上向かないままに、2024年度には904物質にまでその対象数が拡大されます。零細企業を含む多くの事業場に、この考え方の転換が本当にどれだけ理解されていくのか懸念します。
 (一社)日本労働安全衛生コンサルタント会機関誌「安全衛生コンサルタントNo148」の自律的管理への転換に向けて、お二人の記事から一部紹介します。はじめに巻頭言の田村紀裕コンサルタント会常任理事が自律的管理をスポーツに置き換えて「最近のスポーツ界の世界の変化が著しいのはご存じだと思います。従来からの監督・コーチの方針や指示通りにやるというスタイルから、自分たちで考えて高いレベルを目指してそれを楽しむという新しいスタイルへの変化です。正に自律的な管理のイメージを象徴しているのではないでしょうか。ルール・命令ではなく、目的やプロセスを追求する姿は尊いものです。」私は、山登りを趣味としていますので、この例えはよく理解できます。
 同機関誌編集後記には産業医学で著名な森晃爾先生が「新しい化学物質管理は、ほんとうに日本に根付くのだろうか。かなり悲観的に考察してみたい。」私が懸念する本音が分かりやすく書かれています。紹介したいのですが、またの機会にします。

岡本 浩