産業保健コラム

桑村 明男


所属:(一社)産業安全衛生研究所 理事長

専門分野:産業衛生・労働衛生工学

ストレスチェックの義務化、全事業所へ拡大

2025年7月1日

作業環境が原因で心身に不調をきたし休職に至る事例が増えています。また、心身の不調は不安全行動につながり業務上災害の発生要因にもなっています。ストレスチェック等を用いたメンタルヘルス対策が事業場の規模(従業員数)によらず喫緊の課題です。
しかし、ストレスチェック制度が始まってすでに10年が経過していますが、2023年度の実施率は50人以上の事業場で81.7%、50人未満の事業場(実施義務なし)では34.6%にとどまっています。

 

そこで今般、労働安全衛生法の改正案が閣議決定され、2025年5月14日に公布されました。ストレスチェックの実施義務が50人未満の事業所にまで拡大されます。施行は公布後「3年以内」に政令で定める日からとなっており、最長で2028年5月までに義務化される見込みですが、政令によって施行日が早まる可能性もあるため、早めの準備と今後の動向に注意が必要です。

 

今後、厚生労働省から実施に向けた具体的なガイドラインが示されると思いますが、以下に準備について記します。詳細は今後発表されるガイドライン等を参考に取り組んでください。

 

1.「実務担当者」を決めて、「実務担当者」が実施のための具体的な計画を立案する。
  ①実施時期(施行日以前ならなお良いと思います)
  ②対象者(例えば短時間契約のパートタイマーも含めるか等)
  ③実務を委託する業者の選定(委託の範囲、価格は、プライバシーの
   保護は確実か等々)
  ④実施方法(調査方法として用紙の配布・回収かオンラインか、回
   収・集計方法、高ストレス者への医師による面談の案内文作成、配
   布方法等々)
2.「実施者」「実施事務従事者」「面接指導を行う医師」を決める。ただし産業医の選任義務がないため「実施者」「面接指導を行う医師」について、産業保健総合支援センターや地域産業保健センターへの相談をご検討ください。詳細は今後のガイドライン等を参考にしてください。
3.「実務担当者」と選定した業者とで実施に向けた詳細な打ち合わせ
4.「実務担当者」による社内規定およびフローチャート等の作成
5.従業員への周知

 

おおむねこの内容で準備して頂ければ問題ないと思いますが、具体的な内容はガイドラインの公表を待つこととし、まずは社内でストレスチェックへの理解を深めることに取り組んでいただきたいと思います。京都産業保健総合支援センターではご相談をお待ちしております。

桑村 明男