産業保健コラム

高田 志郎


所属:(一財)京都工場保健会 顧問

専門分野:健康、安全、環境の分野

身のまわりの危険等について

2017年9月1日

 ある朝のこと、いつものように、交差点に立って児童の横断指導をして
いたところ私と同年配の老人がくわえタバコで通りかかったちょうど
私の横を通り過ぎようとしたとき、「道路は禁煙ですよ。」と注意した。
その老人は、「そんなこと、どこに書いている。」と反論してきた。仕方
がないので、近くのバス停まで一緒に行き、そこに貼っている小さな小さ
なステッカーを見せた。
そのステッカーには、「京都では路上喫煙は禁止です。」と、3か国語で
書かれていた。
すると、意外なことに「バス停が禁煙であることは前から知っていたが、
道路全部が禁煙になっていることは知らなかった。申し訳ない。」との返
事だった。なんとか納得してもらえたと安心していたところ、突然の逆襲
に見舞われた。

 彼曰く、「確かに、喫煙は身体にも悪いし、子どもたちにしてみれば、
危険以外の何ものでもない。しかし、スマホに集中しながら歩いている
やからの方がもっと危険ではないか。そちらの方を取り締まったらどう
だ。」
確かに、老若男女を問わず、「歩きスマホ」は非常に多い。特に「歩き
スマホ」で、横断歩道をトロトロ歩いている人を見ると、「さっさと歩
け!」と言いたくなる。また、狭い歩道でも、こちらがよけないかぎり、
彼らが道を譲ることはない。
先日見たニュースでは、外国のある町では、「歩きスマホ」に罰金を科し
ているとのことだった。最近では、電車のホームでも転落する事故でもあ
ったのか、やめるように放送している。こうなると、エチケットどころの
話ではなく、自分の安全にも関わってくる。

 しかし、私たち自転車安全利用推進員には、取り締まりの権限はない。
法規の範囲で、指導とお願いまでである。そこで、私も逆襲に出た。「ど
うです。ここで一緒に横断指導をしながら、それらのやからに注意しませ
んか。」と。
が、残念ながらあちらの方が一段上手だった。「わしゃ、こう見えても結
構忙しいんじゃ。」

高田 志郎