産業保健コラム

高田 志郎


所属:(一財)京都工場保健会 顧問

専門分野:健康、安全、環境の分野

法律改正の交付と施行について

2015年7月1日

 通勤途上にある交番の前に、おまわりさんが立っていました。そこへ、妙齢の女性が自転車に乗って通りかかりました。おまわりさんは、おもむろに女性に話しかけました。
「この歩道は、自転車に乗って走ることはできません。歩いて押すか、車道の左端を走ってください。」と。言われた女性は、「いつもこの歩道を走っていたのに、なんで今日はこんなことを言われなくてはならないのか。」と思いながらも、歩いて押すことにしたようです。
 そうです。一昨年の12月に改正された道路交通法はこの6月1日から施行されました。
つまり、改正された内容が6月1日から効力を発揮することになりました。しかし、納得できません。これまでの1年半の間、何の指導もなくて、施行日になったとたん、急に降りろとか車道を走れと言われたら、だれでもびっくりします。特に、この通りを通勤または通学に利用している人たちにとってはたまったものではありません。しかも、繰り返すと罰金だとか講習を受けてもらうなど言われると。
 場所は変わって某国立大学の近くの交差点。この交差点に接する歩道はすべて例外的に自転車の走行が許可されています。この交差点では、学生のマナーを正すために、かなり以前から交通指導員が4つの角に配置され、自転車が歩道を走る際の走り方(歩道の車道寄りを走る)および車道を横断するときの走り方(自転車専用のレーンを走る)を厳しく指導するとともに、歩行者についても横断歩道から外れないように指導していました。毎日実施していますが、それでも指導員に注意されながら歩いたり走ったりしているのが実情です。
 さて、労働安全衛生法についてはどうでしょうか。多くの人がすでにご存じのように、昨年は多岐にわたって改正され、しかもその施行日がまちまちなために混乱を招いているのではないかと心配しています。あるいは、前述のように、施行されるまでは知らんぷりを決め込むのではないかと心配している次第です。すでに施行されているものは別にして、今年の12月1日施行の「ストレスチェックの実施」および来年6月施行の「化学物質のリスクアセスメントの実施」については、本当に難しい問題がいっぱいです。
「ストレスチェック」については、マニュアルが公表されましたが、170ページに及ぶ長編ものです。マニュアルの読み方についての講習会が必要になりそうです。一方、「リスクアセスメント」については、そんなに慌てることはないと思われているかも知れませんが、事業場の中で取扱っている物質が、640物質に含まれているかどうかを調査するだけでも、かなりの時間を要することが考えられます。この秋には、もう少し詳しい情報が提供されるということですが、衛生管理者としては、できるだけ早くスタートして、施行に備えることをお勧めします。

高田 志郎