産業保健コラム
村田 理絵
所属:(一財)京都工場保健会 診療部 健康管理課 課長
専門分野:産業保健・保健指導
ISO 25554:2024で読み解くウェルビーイング推進の第一歩
2025年9月1日
近年、「ウェルビーイング」という言葉を耳にする機会が急増しました。
特に企業や職場においては、「ウェルビーイング経営」や「従業員の幸福度向上」といったキーワードが注目を集めています。
しかし一方で、「結局ウェルビーイングって何?」「どうやって実現すればいいの?」という声も少なくありません。
2024年11月に、国際標準化機構(ISO)が ISO 25554:2024 「高齢社会―地域や企業等におけるウェルビーイングを推進するためのガイドライン」を発行しました。
これを機にガイドラインを一読し、産業保健と社会教育の観点から要点を抽出しましたので一部ご紹介させて頂きます。この解説は実務経験に基づく専門的見解である旨、ご了承頂けましたら幸いです。
1.ISO 25554の概要
この規格は、高齢社会において、地域や企業などのコミュニティが、住民や従業員と共にウェルビーイング(快適かつ健康で幸福な状態)を実現・改善するための進め方を示しています。実務に活用しやすいよう、ガイドラインのポイントを5ステップに集約しました。
①ウェルビーイングの「概念」と「期待成果」を定義する
②評価のしかたを決める
③サービスや活動をつくる
④成果をチェックする
⑤改善につなげる
ISO 25554では、PDCAのような流れ(Plan→Do→Check→Act)を使って、「やりっぱなし」ではなく、継続的に改善していく仕組みを作っていくことが重要とされています。特徴的なのは、ウェルビーイングの状態を一律に定義せず、組織や地域ごとに自ら定義し、持続的に高めることを推奨している点です。
2.ウェルビーイング推進の“第一歩”とは?
人生100年時代、65歳からの余暇は35年にもなります。
「老後=余生」ではなく、「再挑戦・再創造」の時代といわれています。
この長い時間を充実した人生(Well-being)にするためには、
・自己の可能性を広げる
・生活の質を高める
・働き方・学び方をアップデートする
ことが必要です。
そしてこれは、個人だけでなく、地域や職場という場での学び合いによって実現しやすくなります。つまり、ウェルビーイング推進の第一歩は、
「私たちにとってのウェルビーイングとは何か?」
を共に考え、学び合う 社会教育の場 を持つことだと考えています。
そして、これらは、ISO 25554の5ステップの出発点であり、社会教育の目的である「共に学び、共により良い社会をつくる」に直結します。
まずは、ご自身にとってのウェルビーイングとは何か、振り返ってみることから始めてみませんか。
<参考>
国立研究開発法人産業技術総合研究所
ウェルビーイング重視社会への転換を促す国際規格ISO 25554が発行 https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241209/pr20241209.html
一般財団法人日本規格協会
【前編】ウェルビーイング重視社会への転換を促す国際規格ISO 25554が発行
https://webdesk.jsa.or.jp/common/W10K0620/?id=1358
【後編】ウェルビーイング重視社会への転換を促す国際規格ISO 25554が発行
https://webdesk.jsa.or.jp/common/W10K0620/?id=1359
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村田 理絵