産業保健コラム

村田 理絵


所属:(一財)京都工場保健会 診療部 健康管理課 課長

専門分野:産業保健・保健指導

11月14日は何の日かご存知ですか?

2014年11月4日

11月14日はズバリ「世界糖尿病デー」です。
 糖尿病は世界の成人人口の約5~6%が抱えており、2025年には3億8, 000万人に達すると予想されています。この数値は、世界のどこかで10秒に1人が糖尿病に関連する病で命を奪う計算になるといわれています。日本における現状は、40歳以上の3人に1人が糖尿病及び糖尿病予備群となっています。
 拡大を続ける糖尿病の脅威を踏まえ、国際連合が、2007年から毎年11月14日を「世界糖尿病デー」に指定し、世界各地で糖尿病の予防、治療、療養について啓発活動を推進することを呼びかけました。ちなみにインスリンを発見したカナダのバンティング医師の誕生日が由来となっています。
 乳がんの啓発促進のシンボルマークは「ピンクリボン」ですが、糖尿病の啓発促進のシンボルマークをご存知でしょうか。それは「ブルーサークル」で、糖尿病の脅威啓発のため、世界糖尿病デー当日には世界の約1000か所で“ブルーライトアップ”され、京都では二条城や東寺五重塔等でブルーライトアップされています。

 当センターでは、「最近のトピックス」と題して毎年恒例で中嶋千晶先生(なかじまちあき内科クリニック院長)をお招きし、ご講義頂いております。今年は研修日が世界糖尿病デーに近い10月開催であったことから、「第2期特定健診・特定保健指導を迎えて、定期健康診断事後措置を再考する~糖尿病重症化予防の観点から~」というテーマでご講義頂き、研修参加された産業看護職の方々に大変好評でした。ご講義内容の一部をご紹介致します。
 
 2012年の「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、糖尿病が強く疑われる人の治療状況において実に働き盛りである40代の約6割が未治療とのことです。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000032074.html(2012年国民健康・栄養調査)
 ご存知の通り、糖尿病は必要な治療を放置したり、血糖値コントロールが上手くいかないと“しめじ”といわれる神経障害(し)、網膜症(め)、腎症(じ)などの重大な合併症を引き起こし、その結果、人工透析や失明など、生活の質の低下と高額な医療費がかかる状態になります。 しかし、「自覚症状がない」「忙しい」「医療費が負担になる」等の理由により未治療や治療中断し重症化している例が多いといわれています。
http://ncgm-dm.jp/renkeibu/dm_jushinchudan_manual.pdf(糖尿病受診中断対策マニュアル)
 また、たとえ治療中であっても、薬だけもらいに行って血液検査等していない患者もいることからHbA1cが8.0%以上の人へのアプローチとして、本人同意を得た上で、産業医からかかりつけ医に連携を図ってもらうのも一案だとおっしゃっていました。
 連携する情報として、例えば、治療内容や最近の血液検査結果はどうなのか、尿アルブミン量はどれくらいなのか、目等の合併症はあるのか、糖尿病連携手帳(日本糖尿病協会発行。データを見て自分の健康管理に役立て頂く他に、かかりつけ医と病院、内科と眼科、歯科などが情報共有し、患者が適切な診療を受けられるよう連携するための手帳)を携帯しているのか、かかりつけ医から言われていることなどを挙げておられました。
そして産業医は、これらの情報に加え本人の自己管理能力の状態を知った上で、本人にアプローチすることが重要であると説明されていました。
 全国で約5000名にすぎない糖尿病専門医である中嶋先生より、「糖尿病はお薬だけでは血糖コントロール基準の7%以下にもっていくことは難しく、食事や運動等のライフスタイルをいかに改善してもらえるように職域の環境を含めた対象の背景を聞いて把握して支援することが重要」とおっしゃっていたことが印象に残りました。
 中嶋先生は企業の専属産業医としての長年の経験もあり、現在も複数の企業で産業医活動をしておられます。産業医としての立場から、糖尿病治療中の方における低血糖発作がおきた時のリスクへの具体的な職場の安全配慮事項などについても事例をもとに大変分かりやすくご教示頂きました。

 ちなみに、糖尿病連携手帳はかかりつけ医はもちろん、薬局等で必要部数を無料入手できます。http://www.nittokyo.or.jp/patient/goods/(日本糖尿病協会HP)
 産業保健スタッフの皆さんも保健指導等に糖尿病連携手帳を是非役立てて頂ければと思います。

 最後に産業看護職の皆さん。例えば、2型糖尿病治療の新しい選択肢として、尿中から糖をたくさん排泄させることで血糖値を下げる薬がでていますがご存知でしょうか。もしその情報を知らなければ、糖尿病治療中の方の検査結果を見て、血糖コントロール不良と早合点するかもしれません。
 産業看護職はともすれば最新の医学知識が入りにくい環境となります。急速な高齢社会を迎えて、健診結果の有所見率は今後ますます高くなり、疾患を持つ労働者も増えてくることが予想されます。職場の安全配慮や重症化予防のために、これからの産業看護職は最新の医学知識を常に把握しておく必要があります。次年度以降も産業看護職に必要な最新の医学知識が得られるように疾患シリーズの研修会を企画していきますので、当センターの研修会を是非ご活用下さい。

村田 理絵