産業保健コラム

辰巳 朋子


所属:田辺三菱製薬労働組合契約公認心理師・臨床心理士

専門分野:臨床心理学・産業カウンセリング

自然災害や事件・事故後のこころのケア

2019年7月1日

対処しきれないような打撃を受けた時には誰しも心にも傷を負います
このような心の傷を、最近では「トラウマ」と呼ぶようになりました。
自然災害・事件・事故・DV・虐待・いじめ・セクハラ・パワハラ…、予定
にない様々な出来事に出合いますね。そこで、このトラウマティックな
ストレス反応と心のケアについてお伝えして、ダメージが少しでも小さく
なることを願いたいと思います。

 

<トラウマティックなストレス反応はわかりにくい>
日常生活はできているのにソワソワと落ちつかないとか眠れないとか
興味がわかない、集中できない、同じことを繰り返し考えてしまう等の
微妙な不調が訴えられます。本人も気づかずに自分を責めていたり、だる
さや吐き気、下痢等の身体不調もあります。敏感になりすぎる過覚醒と
動けなくなるマヒや回避等の両極端の反応も、そして再体験症状も有名で
す。

 

<大部分は徐々に収まります>
ひどいショックを受けた時の上記のような反応は、誰にでも起こる自然
な反応で、2,3か月もすると徐々におさまってきます。ただし、反応の
現れ方や回復の経過は、人それぞれで違います。比べないようにしましょ
う。

 

<意外と多くの人が苦しんでいます>
2005年の東京23区内で20~59歳の男女1000人の無作為調査では、
回答者の42.4%(男性の35.7%、女性の48.1%)が5種類の出来事の
いずれかで心的外傷を体験していました。自然災害4.7%、事故・病気
26.8%、犯罪・暴力7.1%、突然の死別26.0%、虐待・DV5.5%。そ
のうち深刻な再体験症状を経験していたのはなんと30.1%。

 

<回復を支えること>
安全や安心は大事です。気持ちや体をいたわり、ストレスやトラウマに
ついて学ぶことも力になります。自分で自分をコントロールできるという
感覚は、回復を支えます。語りたくなれば、怖かったり辛かったことを
安心できる場で聞いてもらったり、避けていることのうち小さなことから
少しずつチャレンジしたり、人との絆が頼りになります。心の相談窓口も
役立ちます。

 

<こんなときこそ>
自分の気持ちに波紋が広がっていることを認めて、鎮めるための時間を
持ちましょう。「何かひっかかるとかしっくりこない等の違和感は、
まだはっきりとしないものの、自分に何かを知らせていますので、納まり
をつける心の作業が必要です。一人で過ごす時間と、誰かと一緒の時間の
どちらも大切にしましょう。

辰巳 朋子