産業保健コラム
今坂 一郎
所属:
専門分野:シニア産業カウンセラー
杞憂らしき自問自答
2025年6月2日
経済面が最優先される今の社会の在り方に強い疑問を感じています。人類は経済成長を目指し続けて、いったい何処にたどり着こうとしているのでしょうか。この先にどのような社会像が見えるのでしょうか。
新聞やテレビやネットなどのメディアの報道や専門家と称される人々の言説を見るかぎり、上に述べた疑問に的確に答えてくださるものがほとんど見当たりません。もっぱら眼につくのは、経済成長を後押しするための「投資」や「効率」や「収益」などに着目されたものばかりです。
私自身は「投資」や「株」は博打(バクチ)と見なして忌避し、これは一方の儲けは他方の損となるいわゆるゼロサムゲームに過ぎないと考えています。最近ではアメリカのトランプ大統領による関税闘争が眼につきますが、これはその一つの例であると見ています。また「効率」は時間を短縮させるという意味を含んでいることから、人類は時間まで操ることができるという錯覚に陥っていると思われます。
こうした方面の著書を適宜に選んで読みながら、数年前に読んだ平川克美氏の新書本「経済成長という病」を読み直したりしています。しかし自然に湧きあがってくる自問自答は弱まることなく、鎮まる気配が感じられません。
ものが乏しかった過去の時代には、政治や企業はもとより労働生活者においても、すべてが合理的に行動していると信じられていました。また30年程前には、皆が同じような方向に向っていましたので、その流れに添っておれば楽に生きることができて、しかもそれで良いとも思われていました。
社会や国家というものは、生きているひとり一人の人間の考え方と行動の積み重ねによって築かれます。現在のような経済面を優先する多様化、かつ過剰・飽満・過多化した社会においては、過去に信じていたことを見直す必要があり、以前のような楽な生き方で進むのは危険ではないかと考えています。日常の考え方や行動を見直さねばならないとの思いが強くなるばかりです。
今坂 一郎