産業保健コラム

今坂 一郎


所属:

専門分野:シニア産業カウンセラー

コロナ禍の渦の中での雑感

2021年6月1日

 コロナ禍の渦中で、生きる方向が定められず悩んでいます。最初の緊急事態が宣言される直前、このコロナ禍は長引くであろうと直感しました。と申しますのは、グローバル資本主義が地球全体に蔓延り続ける現状を観ていて、人類は一体どこに向かおうとしているのかと、以前から考えていたからです。

 無意識にせよ「今だけ、金だけ、自分だけ」という新自由主義に染まった多くの人が、グローバル資本主義に邁進しています。ウイルスは地球上に数10億年前から生き続けていて、20万年前に誕生した人類よりはるか先輩です。そのウイルスが瞬く間に国境を越え、増え続ける人類を格好の宿主とするようになりました。まるでウイルスが人類の生き方に対して、警鐘を鳴らしているように感じます。

 アメリカの精神科医で「死ぬ瞬間」の著者であるキューブラー・ロスは、死期を控えた人の感情経験は、「否認」に始まり次に「怒り」、そしてある事が済むまでは等の「取り引き」、絶望を伴う「抑うつ」を経て、最後に受容という「受け入れ」に至る5段階をたどると説いています。グローバル資本主義の終焉すなわち死を、この5段階で捉えてみますと、具体的には表現しにくいのですが、ある種の気づきが生まれる気がします。

 ウイルスの蔓延防止策としての三密回避は、人との接触を極小にして、人とのつながり面で大切な信頼を含むコミュニーケーションづくりを減ずる策であると考えられます。視点が少し外れますが、三密回避は心理カウンセリングで必須とされる受容や共感が生まれるのを減らす策であるとも考えています。

 生物の進化と絶滅を基準とした地質時代的な区分、古生代、中生代、新生代という区分に応じて、現代は「人新世(ヒトシンセイ)」時代と称されるそうです。「人新世」とは、人類の活動が生態系の状態を決める最も重要な要因となった時代とされます。この観点から地球環境問題や気候変動が増加する現状についても憂慮しています。

 現今のコロナ禍は人類の生き方を根本的に問いただしていると考えます。妄想だといって笑われそうな偏見を抱きつつ、自分の生き方を自分自身で選択しなければならないという苦しみを感じています。

今坂 一郎