産業保健コラム

市 綾美


所属:オフィス リアン

専門分野:産業カウンセラー・2級キャリアコンサルティング技能士・社会福祉士

一人で抱え込まないために

2020年12月1日

2020年も終わろうとしています。今年はコロナウィルスという予想もしなかった厄災に見舞われた年でした。コロナ禍で生活のリズムやパターンが変化し、外食やレジャーを楽しむこともままならず、仕事や家庭生活にも大いに影響が出た、そんな年だったと思います。

そんななか、精神的に不安定になる人が増えています。そのせいでしょう、こんなフレーズを目にし、耳にすることが増えました。「悩みを一人で抱え込まないでください」

 

「一人で抱え込まない」とはどうしたらいいのでしょうか。まずは「誰かに話をする」ことです。たとえ解決しなくても、他人に話すことでスッキリしたという経験は、誰でも持っているのではないでしょうか。また、相手から言われたことで何か気づきが生まれたことはありませんか?

話すのが苦手な人にお勧めなのは「紙に書いてみる」ことです。できるだけ他の人が読んでわかるように書いてみるのがコツです(実際には見せなくて構いません)。頭の中で考えていた時は筋道が通っているように感じていても、書いたものを読み返すと、案外考えが飛躍していたり偏っていたりすることに気づくことがあります。それに気づくと、すこし冷静になり、客観的に物事を見つめ直すきっかけになります。

もうひとつ、意外に効果があるのは「本を読んでみる」ことです。書店に行って、たくさん並んだ本の中から、興味をひかれた一冊を選んでみましょう。誰かが書いた言葉が自分の思いと重なってそれまで言葉にならなかった自分のモヤモヤした思いが明確になったり、新たな視点に気づかされたりと、案外心が軽くなるものです。

 

一番良くないのは、自分の頭の中だけでぐるぐると考え続けることです。そんな時は広い視野を持てず、物事を俯瞰で見ることもできなくなっています。そうするとどんどん悪い方向に考えて追い込まれてしまうことがあり、それは時として危険です。

自分の考えを一度頭の外に出してみる、あるいは別の考えを頭に入れてみてください。このアウトプット・インプットができることが、「一人で抱え込まない」ことの大前提なのです。

市 綾美