産業保健コラム

市 綾美


所属:オフィス リアン

専門分野:産業カウンセラー・2級キャリアコンサルティング技能士・社会福祉士

言葉の定義 と コミュニケーション

2014年5月1日

同じ言葉を使っていても、相手と自分では違うニュアンスで使っているように感じたことはないでしょうか。その結果、段々話が噛み合わなくなったり、あるいは予想通りに物事が進まなかったりした経験は、きっと多くの人にあるのでないかと思います。
私はカウンセリング中に、「あなたがおっしゃった〇〇とは、具体的にどういうことか教えてもらえませんか」とよくお願いします。多くの人は、一瞬止まって、それから自分の考えるところを語ってくれます。

例えば「責任を取る」という言葉。これは結構曖昧な言葉で、人によって定義が違いますし、同じ人であっても場面によって変わります。「現状回復すること」「元の状態より良くすること」「再発防止のための対策を立てること」「潔く謝罪すること」などなど…。 仮に誰かから「責任を取りなさい」と言われたとして、相手がどれを求めているのかを理解していなかったら、余計に相手を失望させたり怒らせてしまう可能性が高くなります。

これは、対人関係の中で起こりやすい「コミュニケーションのずれ」です。
先程、説明を求めると多くの人は一瞬止まるといいましたが、話し手はひとつの定義を持っており、それはその人にとって自明の理、説明することなど想定していないからです。「責任を取る=〇〇」は相手との共通の認識であり、相手が「責任を取る=△△」と考えていることなど思いもよらないわけです。さらにいえば、相手が「責任を取る=??」 と思っていることだってあり得ます。そうなってしまうと、そもそもコミュニケーションが成り立っていない恐れすらあります。

お互いの言葉の定義をすり合わせることは、良いコミュニケーションに欠かせない要素のひとつです。大事な言葉は、お互いの定義が共通しているかどうか時折確認してみてはいかがでしょうか。案外おもしろい違いがわかって、そこからコミュニケーションが深まるかもしれません。

市 綾美