産業保健コラム

市 綾美


所属:オフィス リアン

専門分野:産業カウンセラー・2級キャリアコンサルティング技能士・社会福祉士

職場におけるメンタルヘルス対策の必要性

2019年10月1日

 私がメンタルヘルスの仕事に関わらせていただくようになって、かれこ

れ15年程経ちます。仕事を始めた頃は、職場におけるメンタルヘルス対策

の必要性を説明するのにかなりの言葉を費やしていました。その頃とくら

べると今はずいぶん理解が進み、説明する前から「メンタルヘルス対策は

必要」という意識がある会社が増えたように感じます。そこで、こちらも

ついつい説明を端折ってしまうことも最近では珍しくなくなりました。

しかし、実際にメンタルヘルスに関するサポートをさせていただくと、

基本的なことほどしっかり何度も説明しなければならないのだと、改めて

気づく瞬間があります。そこで今日は「なぜ職場においてメンタルヘルス

対策が必要なのか」を、復習の意味も込めてまとめてみたいと思います。

 

職場におけるメンタルヘルス対策とは、言うまでもなく「従業員が健康

で、やりがいを持って仕事ができる」ことを目的とした対策です。そして

それを行うことは、会社にとっても以下の点から意義のあることと言えま

す。

第一は「コンプライアンス(法令順守)」。メンタルヘルス対策は、労働

安全衛生法等に基づいた雇用管理のひとつです。

第二は「リスクマネジメント(危機管理)」。不調者が出ることで起こる

であろう、戦力喪失・人件費負担・周囲の士気低下・訴訟などのリスクを

低減させます。

第三は「CSR(企業の社会的責任)」。企業は社会や環境に貢献するだけ

でなく、社員の幸せに対しても責任を負っていることを忘れてはいけませ

ん。

そして、これらがポジティブに展開できれば、社員のモチベーション

アップ・離職率の低下・生産性の向上などにつながっていくというわけで

す。

 

ひとたび不調者が出れば、その上司・同僚・人事労務担当者・健康管理

スタッフなどへ様々な影響を及ぼし、やがてそれは会社全体へと広がって

いきます。そうならないためにも、メンタルヘルス対策の必要性を再認識

し、基本に立ち返って現在行っている対策を見直してみてはいかがでしょ

うか。

 

市 綾美