産業保健コラム

山田 達治


所属:京セラ株式会社 本社 専属産業医

専門分野:産業医学・メンタルヘルス

会議が長い日本人

2018年10月1日

最近、恐らく日本で働いているのであろうスペイン人がツイッターに
投稿した意見が話題を集めた。全文を引用する。
 
 俺スペイン人だから、1分2分遅れたら「さすがスペイン人」とか
 「ラテン系は時間守らない」と日本人によく言われますね。
 日本人は自分は時間を守る1位国だと思ってるけど、
 日本人はスタート時間しか守らない。
 5時半に終わる予定会議は7時半までに延長すると、
 俺にとって5分遅れるより酷いと思ってる。

 

ネット上の掲示板には、投稿者に共感する意見が溢れた。
外国人に指摘されなくても、
政府から「働き方改革」を指示されなくても、
我々自身が長時間の会議には辟易としている。それなのに、
会議を長引かせる風習が改まりにくいのは何故なのだろうか。

 

思い出すのが、民俗学者である宮本常一の「忘れられた日本人」に
記述された、「村の寄りあい」という話である。対象者は村の成人男性
全員だが、いつ来ていつ帰るのも自由。司会者がいる訳でも、アジェンダ
がある訳でもない。関係なさそうな昔の出来事を語り出す人もいる。
部外者が見れば何の議題で話し合っているのかよく判らないような
際限のない対話が何日も続く極めて非効率的な会議のやり方に見えるが
こうしてじっくり話し合った結果に村民は深くコミットするのだという

 

長引く会議も問題だが、時間最優先の議事進行も考え物だ。
場違いな発言が相次ぐのは、主催者が事前に決めた次第通りに進む議論
に納得がいかないからかもしれない。
理屈を言って紛糾させる人が出るのは、時間が来たから多数決、という
決定手段が乱暴に感じられるからかもしれない。
現代もなお我々が引きずっているであろう村社会意識を無視しては、
納得のいく意思決定はできないのだろう。

 

小職は現在勤めている会社で専属産業医らを集めて会議を主催している
最近、複数の産業医から、「議事議題を整えて行う会議も必要だろうが、
ざっくばらんに思ったことを話し、議事録も取らないで、かつ、
飲み会ではなく真面目に話し合うような機会も欲しい」と要望された。
自分は数週間前から議題を考え、発表者たちと事前の摺り合せをし、
資料に何度も手を入れて会議に臨んできたが、
もっと「寄りあい」がしたいという人たちもいるのだ。
会社から経費と時間をもらって会議を開くからには明確なアウトプットを
出さなければといった気負いが会議をつまらなくしていたかもしれない

 

時間通りに会議を進行することは技術的には可能だが、
それでは深い相互理解や納得を得るのが難しい。
あっちを立てればこちらが立たずだが、会議のあり方は目的に応じて
もっと多様であって良いのだろうと考えさせられた。

山田 達治