産業保健コラム

森口 次郎


所属:(一財)京都工場保健会 産業保健推進部 医療部長

専門分野:産業医学・高血圧

産業医の権限強化について

2018年12月3日

◇ 産業医の権限強化について ◇
    産業保健相談員(医学) 相談員   森口 次郎

 

 平成293月に働き方改革実行計画が決定し、「4.罰則付き時間外
労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」、「7.病気の治療と仕事の
両立(3)労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化」が示され
ました。さらに、労働政策審議会の安全衛生分科会「働き方改革実行計画
を踏まえた今後の産業医産業保健機能の強化について」の検討を受けた
建議が平成296月に取りまとめられ平成307月に働き方改革を推進
するための関係法律の整備に関する法律が成立し労働安全衛生法が
改正されることとなりました。

 

 建議では、「産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると
認められるときに、労働者の健康管理等について必要な勧告を行うことが
できるとされているがその実効性を確保するためにはその勧告の内容が
当該事業場の実情等を十分に考慮したものである必要があるまた産業医
の勧告がその趣旨も含めて事業者に十分に理解されかつ企業内で適切に
共有され労働者健康管理のために有効機能するようにしていくことが
重要である。このため、産業医が勧告を行う場合にあっては、事前にその
内容を示し、事業者から意見を求めることとするとともに、産業医から
勧告を受けた事業者はその内容を衛生委員会に報告することとしもって
産業医の勧告が実質的に尊重されるようしていくことが適当である。」と
述べられています。

 

 これにより産業医への期待がさらに高まると考えられますが、一方で
これまで勧告権の捉え方は産業医によって様々であり、実務のなかでどの
ように行使されるかもそれぞれの産業医に委ねられてきたため、このまま
では産業医、事業者共に混乱を来す可能性が危惧されています。今回の
情報提供はここまでになりますが、現在、日本産業衛生学会政策法制度
委員会では、川上憲人理事長からの「勧告権の定義、勧告を出す場合の
手順や留意事項など、適切な取扱いについて」の諮問に対する答申を作成
していますので完成後に、再び情報提供させていただきたいと存じます。
なお、今回の法改正については、
厚生労働省のホームページ“「働き方改革」の実現に向けて”
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
に詳細に示されていますので、ご参照ください。

森口 次郎