産業保健コラム

竹内 宏一


所属:竹内小児科医院 院長

専門分野:感染症学(免疫、ウイルス学)・産業保健

企業での海外出張渡航者の感染症対策

2014年11月4日

西アフリカでは、エボラ出血熱のパンデミックにより13,703人の感染者(10/30現在)、約5,000人の死者がでている事が毎日のように報道されている。一方国内でも、デング熱が関東を中心に多数発生した。海外からの帰国後にデング熱と診断された患者は毎年約200人前後認められているが国内での流行は70年ぶりである。そこで企業においては海外事業が活発になってきている現在、企業は勿論のこと出張する本人に渡航関連感染症の予防対策が求められるのは云うまでのことはない。渡航前から帰国後までのトータルケアについて簡単に述べる。
出発前に渡航先(先進国、開発途上国)、滞在期間(短期、長期)渡航目的(就労、帯同、ボランティア、救護活動等)、費用(企業負担、個人)等を勘案してトラベラーズワクチンを決定する必要がある。当然、出張先の感染症情報の入手は必須である。例えば、インドでは狂犬病が多い、ベトナムではB型肝炎のキャリアーが20%前後もある。
腸チフス、パラチフスは、インド、ミャンマー、ネパール、インドネシアに、イスラム教の巡礼先のメッカでは髄膜炎菌髄膜炎が多い等の情報である。パソコンにて厚労省のホームページより検索するとか、産業医と相談する等が必要である。それにより、ワクチンが国内で承認されているものなのか未承認なのかの区別もあり、個人の今迄の予防接種歴によってワクチンを決定する。ワクチンによって単回接種で済むワクチンも、数回接種必要なワクチンもあり、準備期間にも左右されるが1回に何種類かのワクチンを同時接種する必要性も考えられる。小児を同行する場合は日本で実施されている定期接種は勿論のこと、それ以外にどの任意接種のワクチンを接種していくか決めること。腸チフス、髄膜炎菌、コレラ(経口)、ダニ脳炎、黄熱(検疫所にはある)等のワクチンは日本では未承認であるがそれ以外のワクチンは承認されている。前述の如く、数回接種により免疫獲得されるワクチンがある事を考え、産業医、専門医と相談のうえ余裕をもって接種スケジュールを立てる事が重要である。以上を充分準備し、渡航しても、帰国後に感染症の罹患、発症が認められる事もしばしばある。例えばマラリア等は当地で発症しなくても帰国後に日本で発症する事がある。マラリアに関しては予防投薬する必要がある。日本人での渡航後患者発生の疾病構造からみて腸管感染症(39%)呼吸器感染症(13%)動物咬傷(8%)皮膚疾患(6%)マラリア(4%)デング熱(3%)尿路感染症(2%)等で、帰国後の体調チェックは症状の有無に関わらず、産業医、専門医を受診する必要がある。
 紙面の関係で詳しく述べなかったが、充分な情報収集、ワクチン接種を渡航前に済ませ、健康な状態で帰国し企業効率を上げられる事を強く望んでやまない。

竹内 宏一