産業保健コラム

坂田 晃一


所属:トヨタバッテリー(株) 産業医

専門分野:産業医学

昨今の産業医研修会の状況

2026年1月5日

 認定産業医制度が発足して以来、令和6年時点で約11万人が認定を受けています。また、令和4年10月時点の認定産業医の有効者数(更新を行っている方)は7万人を超えており、医師5人に1人が資格を取得している計算になります。しかし、実際に産業医活動を行っているのは3万4000名(有効者の約48.7%)との報告があり、「資格は取ったものの始めづらい」という状況もあるのかもしれません。こうした中、最近の産業医研修会に参加される方々の雰囲気は大きく変わってきたと実感しています。

 

 私が産業医業務について話し始めたのは15年前某大学医学部(産業医科大学ではありません)の衛生学セミナーでした。受講者は医学部3年生で、「産業医」という言葉すら知らない学生も多い状況でした。その後10年前から日本医師会認定産業医研修会で講師を務めるようになり、熱意を持って話していたつもりでしたが、講義中に眠そうな参加者も多く、質問もほとんどありませんでした。そこで、「産業医はやってみると面白い仕事である」ことを伝えることを目標に掲げ、内容をより具体的にしました。開業医や勤務医の方が嘱託産業医を行う際のポイントや注意点を取り上げるようにしたところ、この2年ほどで研修後の個別相談が増え、事例に関する具体的な質問も出るようになりました。

 

 今年度からは研修内容に「経験と資格の重要性」を加えています。きっかけは、後期研修中の若い医師から「産業医を中心に働きたいが、まず嘱託産業医から始めるべきでしょうか」という相談を受けたことでした。短期集中型の研修会では20~30代前半の医師が半数を占め、初期研修中の医師の参加も増えています。いわゆる「直産」と言われる層の出現です。私自身も「直産」に近い医師を指導していますが、その動機には多少の違和感を覚えることもあります。しかし、これまで産業医の増加を長年望んできた立場として、頭ごなしに否定することもできません。そのため、「産業医も医師である以上、臨床と同様に経験を積む場に一定期間身を置くこと」、そして専門家としての「社会医学系専門医や産業衛生学会専門医」などの資格の重要性を伝えるようにしています。今後どのように変化していくのか、今は期待と不安が入り混じる複雑な心境です。

坂田 晃一