産業保健コラム

安野 博樹


所属:耳鼻咽喉科安野医院 理事長

専門分野:耳鼻咽喉科・騒音性難聴

騒音性難聴について

2025年11月4日

 産業医学と耳鼻咽喉科において最も関連があるうちの1つが騒音性難聴です。騒音下での職業など、長期間騒音に暴露され徐々に進行する難聴を騒音性難聴と定義し、主に爆発音やライブ会場などで大音響にさらされることなどによって起こる急性の難聴を音響外傷と言います。

 

 騒音性難聴は、凡そ85dB以上の騒音に1日8時間以上曝露される期間が長期間続くと発症するとされています。85dBとはだいたい地下鉄の車内、救急車のサイレン(直近)、パチンコ店内(約90dB)などの音の大きさです。
 騒音性難聴の初期症状は耳鳴、耳閉感などで、難聴を自覚する人は多くありません。難聴を自覚するのは騒音性難聴が進行してからの場合が多いです。その原因として、騒音性難聴の「難聴パターン」に特徴があり、聴力検査にて4000Hz~6000Hzという高音域での難聴が先行し、そのまま騒音暴露され続けると、次第に低音域である会話域に難聴が浸潤していきます。一般的な日常会話はだいたい500Hz~2,000Hzです(Hzの数値が低いほど低音、高いほど高音)。

 

 治療に関しては、騒音によりダメージを受けた聞こえをつかさどる「有毛細胞」を元にもどす有効な治療方法はありません。そのため騒音性難聴では進行予防を目的とした適切な管理が重視されます。
 85db以上の音は騒音性難聴発症のリスクとなるため、予防策として耳栓を使用する、騒音の生じる環境を少しでも改善する、騒音環境下での就労時間短縮化などがあげられます。また聴力検査を定期的に実施して、症状の進行度合を確認することも必要です。

 

 近年いわゆる町工場でも作業工程のオートマティック化で以前と比較し作業員が騒音に暴露される機会が減っていることや、雇用側が「騒音性難聴防止のためのガイドライン」の遵守徹底していることにより、職業性の騒音性難聴は減少傾向にあります。そのガイドラインに令和5年4月に改訂が入りました。雇入時等健康診断において聴力検査で6000Hzの検査の施行と、定期健康診断では、選別聴力検査1,000Hzについては30dB、4,000Hzについては25dB及び30dB の音圧での検査を行うことになっております。
 また、騒音性難聴は職業病として労災認定の対象となります。労災の申請は退職後になり、退職後5年経つと時効になるのでご注意ください。

安野 博樹