産業保健コラム
髙橋 真
所属:髙橋整形外科医院 院長
専門分野:整形外科
転倒しない身体作り-「ロコモ」「フレイル」「サルコペニア」?-
2025年8月4日
皆さんは最近ご自身が転倒されたり、転倒された方のことを聞かれたりしたことはないでしょうか?不可抗力で起こる場合もあるでしょうが、少なくとも自身の筋力やバランス力不足の為に転倒するのは避けたいと思われませんか?
私達は年を取ると、歩くのが遅くなり、歩ける距離も短くなる、食欲が落ちる、成人病やがんのリスクが高くなる、トイレが近くなる、目や耳が不自由になる、物忘れが酷くなる、など様々の不具合が生じてきます。中にはそれらの悪化により、介護を要する状態になられる方もおられます。実は要介護になられる原因の第4位が「転倒」なのです(1位認知、2位脳卒中、3位衰弱)。
肥満・高血圧・高血糖などに関連した「メタボ」は既にご存知の方が多いことと思われます。では「フレイル」や「ロコモ」という単語はご存知でしょうか?
「フレイル」を直訳すると「虚弱」という意味で、『健常・健康』と『身体機能障害・要介護』の間の状態を指します。つまり少し進めば要介護になる一歩手前の状態ということです。
「フレイル」は 1.身体的フレイル(筋力低下・低栄養など) 2.精神・心理的フレイル(鬱・物忘れ・意欲低下など) 3.社会的フレイル(閉じこもり・交流無しなど) という3つの要素に分けられるのですが、その中でも身体的、特に骨・関節・筋肉など運動器機能の低下したものを「ロコモ(ロコモティブシンドローム=運動器症候群)」と呼び、更に筋力・筋肉量低下に特化したものを「サルコペニア=筋肉減少症」と呼んでいます。
「フレイル」「ロコモ」「サルコペニア」にはそれぞれ判定根拠となるチェックリストがあり、「フレイル」には15項目の基本チェックリストやその簡易版(5項目)が、「サルコペニア」は握力・椅子からの立ち上がり時間(5回)の2項目が判定根拠とされています。
また「ロコモ」では7つの動作が可能かのロコチェック、ロコモ度テスト(椅子からの立ち上がり・2ステップテスト・チェックリスト25項目)等により、ロコモ度1・2・3の3群に分け、それぞれに推奨される指導が日本整形外科学会・日本臨床整形外科学会の監修の下に行われています。「ロコモ度1」の群には「サルコペニア・フレイル」の方がほぼ完全に含まれますので、ロコモ度の進行予防で「サルコペニア・フレイル」の予防にもなるのです。
詳細はパソコンの検索やYou Tube などでご覧になれますが、「ロコモ」を予防する為の体操(ロコトレ)として、スクワット(膝を曲げる・伸ばす3秒かけて、5~6回1セット1日3回)、片足立ち1分(1分間1セット1日3回)の2つの体操が推奨されています。単純で面白くもない体操なので、なかなか長続きしないかも知れません。ただ「フレイル」と判定された方の6人に1人は2年後には要介護状態になられているというデータもありますので、要介護状態にならない為にも、ご自身を「転倒」から救う為にも是非ロコトレを試してみて下さい。
髙橋 真