健康情報"ほっと一息"

治療と仕事を両立するための情報⑪ 両立支援におけるストレスマネジメント その1

  • 1月号では、「両立支援に関する休暇制度・勤務制度の整備」についてお話しました。

  • 制度が整っていることに加えて、病気になった従業員への心理的なサポートがあるともっと良いですね。

  • 今月は、休職した従業員が復職後に感じるストレスと、それにより引き起こされる不適応について考えてみましょう。

  • 私達は、日々ストレッサー(ストレスを引き起こすもの)を抱えながら生活しています。ストレッサーには、仕事での要求の高さや人間関係の負荷、大きな環境の変化などがあります。

  • 病気によって体調不良や疲労感などの身体症状があったり、通院・治療を続けたりすることもストレッサーになりますね。

  • それに加えて、もともとの身体状況や価値観といった個人の要因、家族の悩みやプライベートな問題といったストレッサーもあります。

  • ところで、仕事をするには「情報処理能力」が必要です。記憶力や注意力、判断力、コミュニケーション力(共感力)も含まれ、この能力を「キャパシティ」と言います。

  • 色々なストレッサーが自分のキャパシティに収まる負荷であれば適応状態となりますが、負荷がキャパシティを超える大きさになったら、不適応状態になってしまいます。

  • 復職した従業員の中には、仕事が覚えられない、失敗・ミスが多いなど、業務上の不適応を経験する人もいます。そうなると、メンタルヘルス上の問題が起こってきます。

  • もう少し詳しく知りたいですね。

  • 従業員は不適応状態(仕事の効率低下など)を感じると、元の仕事効率に戻そうと過剰適応行動を取りがちです。

  • つまり、無理して頑張りすぎるということですね。

  • はい。すると無意識のうちに過剰適応による脳疲労1)が発生し、さらなるパフォーマンスの低下やミスの増加につながります。
    そしてそのような状態について、自分の努力や能力不足のせいにするといった、誤った認識をしがちです。

  • それがさらに過剰適応を引き起こし、悪循環となって脳疲労が悪化するのですね。

  • そして、不適応な状態が続くと、気分の落ち込み、辛さや不安、不眠なども起こってきます。

  • そうならないために、復職から時間が経っても注意が必要なんですね。
    次回は、不適応を予防するための行動について考えてみましょう。

1)
脳疲労とは、急性・慢性の心理的、物理的な脳への負荷により、脳機能が低下し、社会機能ないし日常生活に支障をきたしている状態を指します。
【参考資料】
立石清一郎ほか
「産業保健スタッフに必要な疾患の知識と最新の治療」メディカ出版(2020年)