健康情報"ほっと一息"

治療が必要になったときに知りたい情報 ⑨復職後も治療を続けるには?

  • 12月号では、休職した人が復職するまでの流れについてお話しました。

  • 今月は復職した後の話です。
    復職後も治療や検査など、病院に通う必要がある人は多いですね。

  • そんな場合のために、「両立支援に関する休暇制度・勤務制度の整備」について考えてみましょう。

  • まず休暇制度についてです。

  • 「通院は必要だけど、丸1日休むのはもったいない。」という人は多いと思います。
    そんな時のために「時間単位の年次有給休暇」や「半日単位の年次有給休暇」があれば、利用しやすいですね。

  • 労働基準法に基づく年次有給休暇は、1日単位で与えることが原則です。
    しかし、時間単位の年次有給休暇は、労使協定を結べば、1時間単位で与えることが可能です(上限は1年で5日分まで)。
    このほか、本来の1日単位での取得を阻害しない範囲で、就業規則等の定めによって、労働者の請求に応じて運用される場合は、年次有給休暇を半日単位で与えることもできます。

  • また、「病気休暇」もあると活用しやすいですね。

  • 病気休暇は労働基準法に定められた休暇ではなく、事業者が自主的に設ける休暇です。入院治療や通院のために、年次有給休暇とは別に休暇を付与するものです。対象疾病などの取得条件や取得中の処遇(賃金の支払いの有無等)は事業場の実情に合わせて決めたらよいでしょう。

  • 休暇制度の次は勤務制度です。
    治療と仕事を両立する従業員にとっては、バスや電車通勤でも、車通勤でもラッシュ時は身体への負担が大きくなります。

  • 「時差出勤制度」があれば、1日の勤務時間はそのままで、始業・終業の時刻を変更することで、身体に負担のかかる時間帯を避けて通勤することができますね。

  • 他に「短時間勤務制度」を導入している事業場もあります。

  • 内閣府による「がん対策に関する世論調査(平成28年)」では、「働くことが可能で、働く意欲のあるがん患者が働き続けるようにするためには、どういう取り組みが必要だと思いますか?」という質問に対して、最も多い52.6%の人が「病気の治療や通院のために短時間勤務が活用できること」と答えたそうです。

  • フルタイムでの復帰だと体力に自信が無い場合など、一定の期間を設けて短時間勤務から始めることができると、復帰しやすいですね。

  • 今月は、「時間単位の年次有給休暇」「病気休暇」「時差出勤制度」「短時間勤務制度」など、両立支援を行うための制度(環境整備)について考えてみました。
    制度の導入で気を付けることは?

  • 制度を導入し、活用することで、病気になった従業員の負担を軽減したり、治療を続けやすくすることはもちろん大事ですが、それによって周囲への負担が続くと全体が疲弊してしまいます。

  • 制度の導入は「周囲への配慮」も併せて考えたいですね。

【参考資料】
厚労省 事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(令和2年3月改訂版)
近藤明美ほか 「がん治療と就労の両立支援 制度設計・運用・対応の実務」 日本法令(2017年)