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京都産業保健総合支援センター メールマガジン159号 2014/11/4
ホームページ:http://www.kyoto-sanpo.jp
発行:京都産業保健総合支援センター 所長 森 洋一


◇京都産業保健総合支援センター ホームページ情報◇

1)特定化学物質障害予防規則等を改正しました。<2014.10.10 UP>

        http://www.kyoto-sanpo.jp/


◇企業での海外出張渡航者の感染症対策◇

産業医学相談員 竹内 宏一

 西アフリカでは、エボラ出血熱のパンデミックにより13,703人の感染者(10/30現在)、約5,000人の死者がでている事が毎日のように報道されている。一方国内でも、デング熱が関東を中心に多数発生した。海外からの帰国後にデング熱と診断された患者は毎年約200人前後認められているが国内での流行は70年ぶりである。そこで企業においては海外事業が活発になってきている現在、企業は勿論のこと出張する本人に渡航関連感染症の予防対策が求められるのは云うまでのことはない。渡航前から帰国後までのトータルケアについて簡単に述べる。
出発前に渡航先(先進国、開発途上国)、滞在期間(短期、長期)渡航目的(就労、帯同、ボランティア、救護活動等)、費用(企業負担、個人)等を勘案してトラベラーズワクチンを決定する必要がある。当然、出張先の感染症情報の入手は必須である。例えば、インドでは狂犬病が多い、ベトナムではB型肝炎のキャリアーが20%前後もある。
腸チフス、パラチフスは、インド、ミャンマー、ネパール、インドネシアに、イスラム教の巡礼先のメッカでは髄膜炎菌髄膜炎が多い等の情報である。パソコンにて厚労省のホームページより検索するとか、産業医と相談する等が必要である。それにより、ワクチンが国内で承認されているものなのか未承認なのかの区別もあり、個人の今迄の予防接種歴によってワクチンを決定する。ワクチンによって単回接種で済むワクチンも、数回接種必要なワクチンもあり、準備期間にも左右されるが1回に何種類かのワクチンを同時接種する必要性も考えられる。小児を同行する場合は日本で実施されている定期接種は勿論のこと、それ以外にどの任意接種のワクチンを接種していくか決めること。腸チフス、髄膜炎菌、コレラ(経口)、ダニ脳炎、黄熱(検疫所にはある)等のワクチンは日本では未承認であるがそれ以外のワクチンは承認されている。前述の如く、数回接種により免疫獲得されるワクチンがある事を考え、産業医、専門医と相談のうえ余裕をもって接種スケジュールを立てる事が重要である。以上を充分準備し、渡航しても、帰国後に感染症の罹患、発症が認められる事もしばしばある。例えばマラリア等は当地で発症しなくても帰国後に日本で発症する事がある。マラリアに関しては予防投薬する必要がある。日本人での渡航後患者発生の疾病構造からみて腸管感染症(39%)呼吸器感染症(13%)動物咬傷(8%)皮膚疾患(6%)マラリア(4%)デング熱(3%)尿路感染症(2%)等で、帰国後の体調チェックは症状の有無に関わらず、産業医、専門医を受診する必要がある。
 紙面の関係で詳しく述べなかったが、充分な情報収集、ワクチン接種を渡航前に済ませ、健康な状態で帰国し企業効率を上げられる事を強く望んでやまない。


◇11月14日は何の日かご存知ですか?◇

保健指導相談員 村田 理絵

11月14日はズバリ「世界糖尿病デー」です。
 糖尿病は世界の成人人口の約5~6%が抱えており、2025年には3億8, 000万人に達すると予想されています。この数値は、世界のどこかで10秒に1人が糖尿病に関連する病で命を奪う計算になるといわれています。日本における現状は、40歳以上の3人に1人が糖尿病及び糖尿病予備群となっています。
 拡大を続ける糖尿病の脅威を踏まえ、国際連合が、2007年から毎年11月14日を「世界糖尿病デー」に指定し、世界各地で糖尿病の予防、治療、療養について啓発活動を推進することを呼びかけました。ちなみにインスリンを発見したカナダのバンティング医師の誕生日が由来となっています。
 乳がんの啓発促進のシンボルマークは「ピンクリボン」ですが、糖尿病の啓発促進のシンボルマークをご存知でしょうか。それは「ブルーサークル」で、糖尿病の脅威啓発のため、世界糖尿病デー当日には世界の約1000か所で“ブルーライトアップ”され、京都では二条城や東寺五重塔等でブルーライトアップされています。

 当センターでは、「最近のトピックス」と題して毎年恒例で中嶋千晶先生(なかじまちあき内科クリニック院長)をお招きし、ご講義頂いております。今年は研修日が世界糖尿病デーに近い10月開催であったことから、「第2期特定健診・特定保健指導を迎えて、定期健康診断事後措置を再考する~糖尿病重症化予防の観点から~」というテーマでご講義頂き、研修参加された産業看護職の方々に大変好評でした。ご講義内容の一部をご紹介致します。
 
 2012年の「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、糖尿病が強く疑われる人の治療状況において実に働き盛りである40代の約6割が未治療とのことです。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000032074.html(2012年国民健康・栄養調査)
 ご存知の通り、糖尿病は必要な治療を放置したり、血糖値コントロールが上手くいかないと“しめじ”といわれる神経障害(し)、網膜症(め)、腎症(じ)などの重大な合併症を引き起こし、その結果、人工透析や失明など、生活の質の低下と高額な医療費がかかる状態になります。 しかし、「自覚症状がない」「忙しい」「医療費が負担になる」等の理由により未治療や治療中断し重症化している例が多いといわれています。
http://ncgm-dm.jp/renkeibu/dm_jushinchudan_manual.pdf(糖尿病受診中断対策マニュアル)
 また、たとえ治療中であっても、薬だけもらいに行って血液検査等していない患者もいることからHbA1cが8.0%以上の人へのアプローチとして、本人同意を得た上で、産業医からかかりつけ医に連携を図ってもらうのも一案だとおっしゃっていました。
 連携する情報として、例えば、治療内容や最近の血液検査結果はどうなのか、尿アルブミン量はどれくらいなのか、目等の合併症はあるのか、糖尿病連携手帳(日本糖尿病協会発行。データを見て自分の健康管理に役立て頂く他に、かかりつけ医と病院、内科と眼科、歯科などが情報共有し、患者が適切な診療を受けられるよう連携するための手帳)を携帯しているのか、かかりつけ医から言われていることなどを挙げておられました。
そして産業医は、これらの情報に加え本人の自己管理能力の状態を知った上で、本人にアプローチすることが重要であると説明されていました。
 全国で約5000名にすぎない糖尿病専門医である中嶋先生より、「糖尿病はお薬だけでは血糖コントロール基準の7%以下にもっていくことは難しく、食事や運動等のライフスタイルをいかに改善してもらえるように職域の環境を含めた対象の背景を聞いて把握して支援することが重要」とおっしゃっていたことが印象に残りました。
 中嶋先生は企業の専属産業医としての長年の経験もあり、現在も複数の企業で産業医活動をしておられます。産業医としての立場から、糖尿病治療中の方における低血糖発作がおきた時のリスクへの具体的な職場の安全配慮事項などについても事例をもとに大変分かりやすくご教示頂きました。

 ちなみに、糖尿病連携手帳はかかりつけ医はもちろん、薬局等で必要部数を無料入手できます。http://www.nittokyo.or.jp/patient/goods/(日本糖尿病協会HP)
 産業保健スタッフの皆さんも保健指導等に糖尿病連携手帳を是非役立てて頂ければと思います。

 最後に産業看護職の皆さん。例えば、2型糖尿病治療の新しい選択肢として、尿中から糖をたくさん排泄させることで血糖値を下げる薬がでていますがご存知でしょうか。もしその情報を知らなければ、糖尿病治療中の方の検査結果を見て、血糖コントロール不良と早合点するかもしれません。
 産業看護職はともすれば最新の医学知識が入りにくい環境となります。急速な高齢社会を迎えて、健診結果の有所見率は今後ますます高くなり、疾患を持つ労働者も増えてくることが予想されます。職場の安全配慮や重症化予防のために、これからの産業看護職は最新の医学知識を常に把握しておく必要があります。次年度以降も産業看護職に必要な最新の医学知識が得られるように疾患シリーズの研修会を企画していきますので、当センターの研修会を是非ご活用下さい。


◇「心和む秋」に◇

メンタルヘルス対策支援促進員 伊達 義範

 11月ともなりますと、日は短く、朝夕の冷え込みが厳しくなります。この原稿も、愛猫を膝に置き、暖まりつつ書いております。子供のころ習った唱歌、「旅愁」が思い出されます。作曲者のオードウエイは、医師でもありました。
 この「愁う」という字は、「秋」の下に「心」を書きます。「秋」には、「縮む」という意味があるそうです。寒くなっても心が縮まないよう、当センターは、メンタルヘルス対策等の業務に取組んでおります。
 さて、この季節に有難いのは、心身が温まるものです。熱燗、おでん、鍋…、いろいろ挙げられますが、温泉に代表される入浴も、その一つではないでしょうか?風呂無しアパートに住んでいた学生時代、銭湯に行くと、湯船につかって「ああ、極楽じゃ」と言っていたおじいさんを思い出します。
 この「ああ、極楽じゃ」には、実は根拠があります。仏教に「温室洗浴衆僧経(うんしつせんよくしゅそうきょう)」というお経があります。そこでは、ブッダと名医の問答の中で、洗浴により病が除かれることなどが記されております。仏教とともに、入浴文化が入って来たという説もあります(最初は蒸し風呂であったそうです)。
 日本人の風呂好きも、心身の健康に役立つ面があるのですね。まさに「ああ、極楽じゃ」です(ただし、医師から入浴を控えるよう指示されている方は、医師の指示を優先してくださいね)。
 ところで、私が住んでおります丹後地方は、あちこちに温泉があります。温泉旅館や近代的なホテルもありますが、数百円で利用できる「立ち寄り湯、日帰り温泉」もあります。食べ物もおいしいです。ぜひ皆様にご利用いただき、心和む秋になりますと、有難く思います。


■第11回メンタルヘルスセミナー「働く人々のメンタルヘルスケア」
  ~それぞれの立場から、今必要なことを考える~■

(主催:栄仁会京都駅メンタルヘルスクリニック 
復職トレーニング専門デイケア「バックアップセンター・京都」)

日 時:2014年12月4日(木)14:00~16:10
場 所:栄仁会京都駅メンタルヘルスクリニック
     バックアップセンター・京都
参加費:無料
定 員:60名

★詳細、お申込用紙はこちらからプリントアウトして下さい。

http://info.eijinkai.or.jp/kyoto_info/files/141204_seminar_11.pdf


◆産業保健に関する各種研修会のお知らせ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/5semina/semina-s.htm
 ※11月~12月開催の研修会を掲載しています。奮ってご参加下さい。
 ※当センターが実施する「産業医研修会」について、付与できる単位は
  「生涯研修」のみとなります。
  「基礎研修」を受講される方は、京都府医師会主催の研修会を
   ご覧ください。
  http://www.kyoto.med.or.jp/member/sports/index.html

◆京都産業保健総合支援センターホームページ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp

◆京都産業保健総合支援センターご利用案内◆
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◆相談のご案内◆
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◆産業保健トピックス◆
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◆メンタルヘルス対策支援サービスのご案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/mental/index.htm

◆メールマガジン(バックナンバー)◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/index2/merumaga/merumagaframe.htm

◆東日本大震災関連情報◆ http://www.rofuku.go.jp/higashinihon_daishinsai/tabid/422/Default.aspx


発行人:森 洋一  編集人:吉岡 宏修  info@kyoto-sanpo.jp
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