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京都産業保健総合支援センター メールマガジン157号 2014/9/1
ホームページ:http://www.kyoto-sanpo.jp
発行:京都産業保健総合支援センター 所長 森 洋一


◇京都産業保健総合支援センター ホームページ情報◇

1)「労働災害のない職場作りに向けた緊急対策」を実施<2014.8.19 UP>

        http://www.kyoto-sanpo.jp/



産業医学相談員 坂本 史彦

 厚生労働省が作成する“発がん性のある有機溶剤を取扱う事業者の方へ”というリー
フレットをご存知でしょうか?
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/140206-01a.pdf
 当該リーフレットにおいては、「作業記録を作成し、作業者の健診結果、作業環境の測定記録などとともに保存してください。」と説明されています。
 対象となる物質はクロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロルエタン、ジクロルメタン、スチレン、1,1,2,2-テトラクロルエタン、テトラクロルエチレン、トリクロルエチレン、メチルイソブチルケトンの10物質です。既に第二種有機溶剤としてなじみ深い物質もあります。
 “発がんのおそれ”とは国際がん研究機関(IARC)の分類により“発がんのおそれ”ありと認定された物質、つまり、グループ1 :発がん性がある、グループ2A:恐らく発がん性がある、グループ2B:発がん性の恐れがある、の3カテゴリーに含まれる物質をさします。
【記録内容】
1 作業記録の作成
  常時、作業に従事する労働者について、1カ月ごとに次の事項を記録しましょう。
  ①労働者の氏名
  ②従事した作業の概要、作業に従事した期間
  ③発がんのおそれのある有機溶剤により著しく汚染される事態が生じたときは、
   その概要と事業者が取った応急措置の概要

2 作業記録の保存の延長
  健康被害が発生するまでに時間がかかることがあるため、有機溶剤中毒予防規則
 (以下「有機則」という。)で規定する保存年限(3年又は5年とされている)に
 とらわれることなく、記録は30年間保存しましょう。
  なお、記録方法には、書面による記録のほか、電磁的記録による方法も考えられます。
 
3 有害性などの情報の掲示
  作業者が見やすい場所に次の事項を掲示しましょう。
   ①有機溶剤の名称
   ②人体に及ぼす影響
   ③取扱上の注意事項
   ④使用する保護具

4 作業記録の保存場所
  一つの工場しか有しない企業ではその保管は比較的容易かと思いますが、グループ
 企業で作業者が工場を転勤する場合に「その記録を何処に保管するか?」は非常に悩
 ましい問題です。構造改革等により勤めていた工場が閉鎖になることもあるからです。

 また、作業記録は、作業者の診療録、作業環境測定結果等の関係資料と共に保管する
 ことが望ましいと思います。それぞれの事業体で主には安全衛生委員会等を通じて話
 し合い「作業記録の保管場所」についても事前に取り決めをすることが必要と思われ
 ます。
  皆様の会社におかれましては、「どこに保管するか?」につきまして、この機会に
 話し合い、時の経過により関係資料が逸散することのないよう確実に保管していただ
 きたいと思います。


◇ストレスチェックの義務化◇
 カウンセリング担当相談員 伊東 眞行 
 
 改正・労働安全衛生法が6月25日に公布されました。(平成26年法律第82号)
改正項目の中で、メンタルヘルス対策のトピックは「ストレスチェック制度の創設」
です。
従業員数50人以上の全ての事業場で「ストレスチェック」の実施が義務化されます。
(平成27年12月までに施行される見込み)
制度の概要については以下のサイトの②をご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000050905.pdf

 ストレスチェック義務化の背景としては、精神障害の労災認定件数が3年連続で過去
最高を更新したり、強いストレスを感じている労働者の割合が高どまりしている状況
があります。
この法案は、2~3年前から国会で審議されながら、可決が延び延びになっていたので、
ようやくたどり着いた、という思いがしました。

 この制度の目的は、一次予防(労働者のメンタルヘルス不調の未然防止)です。つま
り、働く人が「早くストレスに気づく」、職場側は、ストレスの原因となる「職場環境
を改善する」ことです。
 ストレスチェックは、医師、保健師等が実施することになっています。実施後、本人に
検査結果が通知されます。そして、本人が希望すれば、医師による面接指導が実施され
ます。医師の意見を聴いた上で、必要な場合には、就業場所の変更、作業の転換、労働
時間の短縮、深夜業の回数の減少等、適切な就業上の措置を講ずることが義務となりま
す。
 具体的なチェック項目については、従来、使われてきた「職業性ストレス簡易調査票」
を参考にしながら、今後、推奨する標準的な項目が示される予定とのことです。(標準
的な項目は、「心身のストレス反応」「ストレス要因」「周囲のサポート」の側面から
検討中ですが、下記をご参照下さい)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/00000
52720.pdf

 各事業所はどのように対応すれば良いのかについて関心が高まってきていると思われま
す。
質問紙に答える形式となるでしょうから、例えば、労働者が“会社に遠慮して”あるい
は“自分を元気に見せよう”として、正直に答えてくれなければ、ストレスが過小に評価
されることもあるでしょう。
 ストレスチェックの義務化は、本人がストレスに早く気づく機会になると思われます。
また、職場ごとのストレスの状況を事業者が把握すれば、職場環境の改善を促すので、
ストレス対策の大きな前進と言えます。そして、必要な人が医師の面接指導を気軽に受け
られるためには、事業所をあげての理解と啓発、体制作りが重要となります。事業所の対
応が間に合うのかどうかも課題と言えるでしょう。
 現在、有識者による「ストレスチェック項目等に関する専門検討会」がすでに3回開催
されました。この法律改正を実りあるものにするには、今後も、私たちメンタルヘルス
支援者も含め、労働者も事業所も関心持って情報収集し、関係者が知恵をしぼって実施
にこぎつけていかねばならないと考えます。

 制度の詳細については、厚生労働省の「こころの耳」の『改正労働安全衛生法のポイン
ト』に詳しく掲載されています。
http://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou.html

労働安全衛生法改正関連の情報は下記のサイトをご参照下さい。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/an-
eihou/



メンタルヘルス対策促進員 西村 和記
 
 平成23年3月に中災防が「小売業におけるストレス対処への支援」というテキスト
を作成しました。その中で職業性ストレスとして量的負担、身体的負担とともに速度
負担、感情負担についても言及されています。
 対人サービスなので相手のペースを優先するだけでも、「とてもスピードが要求さ
れると感じ、追い立てられるような」気がするかもしれませんし、業務の一環として
感情を管理する必要のある労働を感情労働と言いますが、その感情管理が大きな負担
と感じることがあります。
 ある特定の感情を作り出したり、またマイナスの感情を制御したりすることを感情
負担と言いますが、生じた感情をそのまま出せない時、「感情を隠すことによる負担」
が生じていることがあります。
 「仕事の上で感情や気持ちがかき乱される」、「仕事に感情的に巻き込まれてしま
うことがある」といった感情負担や、「たとえ気が進まなくても皆に平等に接するこ
とが求められる」、「皆に親切で親しみやすくあることが求められる」といった「感
情を隠すことによる負担」は男女とも管理職で最も高く、ついで販売職で高いとされ
ています。
 これら感情負担、感情を隠すことによる負担は、実は業種を問わずどの人にも起こ
りえます。
 「何だかわからないがなんとなく落ち着かない、気持ちが重い」といった時に、も
しかすると、これら「感情負担、生じた感情をそのまま出せない負担」があるのかも
しれません。
 これらの負担に対しては、生じた気持ちを、その場では無理でも後から場を設けて
グループなどで気持ちを語りあうデブリーフィングが有効とされますし、また個人で
うまく対処していくコツを身に着けることも、当たり前のことかもしれませんが大変
有効とされます。
死ぬまで勉強とよく言われますが、どんな場面でも自らの成長に役立て得る機会にし
ていきたいものです。



◆産業保健に関する各種研修会のお知らせ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/5semina/semina-s.htm
 ※10月~12月開催の研修会を掲載しています。奮ってご参加下さい。
 ※当センターが実施する「産業医研修会」について、付与できる単位は
  「生涯研修」のみとなります。
  「基礎研修」を受講される方は、京都府医師会主催の研修会を
   ご覧ください。
  http://www.kyoto.med.or.jp/member/sports/index.html

◆京都産業保健総合支援センターホームページ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp

◆京都産業保健総合支援センターご利用案内◆
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  http://www.kyoto-sanpo.jp/4soudan/soudan.htm

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◆産業保健トピックス◆
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◆メンタルヘルス対策支援サービスのご案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/mental/index.htm

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  http://www.kyoto-sanpo.jp/index2/merumaga/merumagaframe.htm

◆東日本大震災関連情報◆ http://www.rofuku.go.jp/higashinihon_daishinsai/tabid/422/Default.aspx


発行人:森 洋一  編集人:吉岡 宏修  info@kyoto-sanpo.jp
編集協力:京都産業保健総合支援センター産業保健相談員
発行/配信:京都産業保健総合支援センター http://www.kyoto-sanpo.jp