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京都産業保健総合支援センター メールマガジン161号 2015/1/5
ホームページ:http://www.kyoto-sanpo.jp
発行:京都産業保健総合支援センター 所長 森 洋一


◇新年のご挨拶◇
新年 明けましておめでとうございます。
 旧年中は、京都産業保健総合支援センターの事業運営にご理解、ご支援を賜り厚く御礼申し上げます。
 本年も産業保健スタッフの皆様の活動を支援するため、研修、相談対応、情報提供などの事業を効果的かつ積極的に展開して参ります。
 このメールマガジンにつきましても、皆様のお役に立ちますよう内容の充実に努めて参りますので、今後ともご愛読の程、宜しくお願い申し上げます。


◇京都産業保健総合支援センター ホームページ情報◇

1) 「第29回日本医学会総会2015関西」のご案内<2014.12.18 UP>

2) 化学物質による健康障害防止指針(がん原性指針)の改正について
  <2014.12.26 UP>

         http://www.kyoto-sanpo.jp/


◇職場におけるメンタルヘルスケアの流れ◇
メンタルヘルス相談員 須賀 英道

最近の職場でのメンタルヘルス意識の向上には目を見張るものがある。社会にうつ病が急増し、産業界にもメンタルヘルスの位置付けが欠かせなくなってきたためであろう。
労働者のストレスチェックがH27年12月から義務化されることはその大きな現れである。この基本的視点は、ストレス状況にある労働者の早期発見と職場の対応である。一部にポジティブ志向によるストレスコーピング指導を取り入れた健康教育が社内で施行されるところも増えている。これは一次予防を主眼においたものとして評価されよう。
 こうした職場でのメンタルヘルスケアの動きは急速に進んでいる。しかし、いつの時代も対処がその状況に遅れてなされているのは致し方ない。感染症対策が主であった時代、有害物質対処に追われた時代、そして今は、生活習慣病やうつ病対処の時代となっている。この流れをみて興味深いのは、作業環境管理の視点からセルフケアの視点に移行していることである。これはどうしてであろうか?
 生活習慣病やメンタル疾患が個人の解決する事象として位置付けられていることであろう。うつなどのメンタル疾患が起きにくい職場整備といった意識は、長時間労働の制限など一部にあるものの、元来の適材適所的な捉え方は低い。
 そうした中で、最近若年層に目立っているのは、発達障害の増加である。小・中・高の学内での発達障害者が増え、そのサポートシステムが大きな話題となっている。そして、彼らがどんどん社会に出てくると、その就労問題が最も大きな問題となってくる。
ここで視点を捉え直すと、今後の産業界に何が必要であるか、自ずと見えてこよう。
 21世紀になり激増したうつ病は、従来の内因性のうつ病ではない。環境に適応できない適応障害性のうつ病が主になっている。そして、現在増えている発達障害についても、現代社会の中で元来のコミュニケーション力や注意処理力でうまく適応できない人たちが浮上してきたためという見方もできる。
 この視点で見ると、不適応者たちのノーマリゼーションばかりがこれから取り組むべき有効な対処でないことは、感染症や有害物質の際の作業環境管理で学んできたことである。すなわち、彼らの適応しやすい職場を増やしていくことである。半世紀前までは、こうした職場があるゆる業界に数多くあったのだが、収益向上のために合理化、効率化が最優先とされ、人員削減、自動化などさまざまな産業界の変化が進んだ。それによって、一次産業界や二次産業界での職場が激減したのである。三次産業界では、コミュニケーション力や注意処理力が最も要求される職種である。こうした職場に全ての人が適応できるわけではない。
 これからの時代に求められるメンタルヘルスケアとは、適材適所を取り入れた環境整備なのである。


◇化学物質のリスクアセスメントの実施<コントロール・バンディングについて>◇
労働衛生工学相談員 髙田 志郎

前回の続きです。昨年の6月に、労働安全衛生法の改正が行われました。その中の1つに、現在、文書の交付が義務付けられている640の化学物質を取扱う事業者に、これらの物質のリスクアセスメントを実施することが義務付けられました。ただし、施行は来年(平成28年)の6月の予定です。それでも、大変なことになりました。事業場で使用している化学物質が、この640物質に含まれているのかいないのか、調べるだけでも大変です。そして、もし含まれていた場合には、いよいよリスクアセスメント(以下「RA」と略します)の開始です。
 一般的なRAの手順としては、①職場で取扱う危険・有害な物質の洗い出し、②これらの危険・有害な物質のリスクを見積もる、③リスクの優先度の決定とリスク低減対策の検討、④低減措置の実施と記録、となっています。この中で、もっともやっかいなのが、②の「リスクの見積もり」です。化学物質のリスクについては、化学物質そのものの危険・有害性だけでなく、直接作業者に影響を与える、職場における気中濃度の状態を知る必要があります。そのためには、作業環境測定または個人ばく露濃度の測定が必要になりますが、残念なことに前記の640物質のほとんどについて、測定する手段がありません。
 さて、今回ご紹介するのは、「コントロール・バンディング」という耳慣れない手法です。これは、中小企業向けに作成された化学物質のリスクを見積もることができる簡易的な手法のことです。つまり、ややこしい作業環境測定とか、個人ばく露測定を行わなくても、かなりアバウトになりますが、リスクを見積もることができます。ただし、わが国においては、法令で作業環境測定の実施が義務付けられている化学物質があることへの留意が必要です。と言いますのも、もしこれら化学物質に係る作業環境測定を怠ると、罰則を受けることになりかねないからです。
 コントロール・バンディングは、上記の②の項目が中心となります。すなわち、職場における危険・有害物質の洗い出しが終わった段階で、これらの物質の危険・有害性の調査にかかります。まず、手元に上記の640物質のリストを用意し、これらの物質の有無を調べます。リストに合致した物質があれば、今度はSDS(安全データシート:ネットで簡単に調べることができます)でもって、GHS分類区分(急性毒性等の有害性のレベル(HL:ハザードレベル))がどうなっているかについて調べます。もし、複数の有害性のレベルが得られた場合は、もっとも大きいものを選びます。
 次に作業環境レベル(EWL)について調べます。それには、使用する有害化学物質の使用量、その揮発性とか飛散性および換気の状態とか保護具の使用の有無等が要点となります。これらについては、比較的簡単に調べることができます。
 さらに、作業時間・作業頻度のレベル(FL)を求めた上で、目的であるばく露レベル(EL)を推定することができるということです。そして、上記の③、④のステップと進めることによってRAが完成することになります。
 なお、コントロール・バンディングは、職場における危険・有害物質の作業者に与えている状況について、各種測定等を抜きにしてリスクのレベルを推定する方法ですので、その結果の信頼性がアバウトであることを理解しておく必要があります。
 以上、文章で表すといかにも簡単そうですが、たいへんな作業には変わりありません。今からトレーニングしておかないと、来年の6月には間に合いません。今年は、コントロール・バンディングに関する実習を含めた講習会が各地で開催されることと思います。積極的に参加し、法律施行の際に慌てることのないよう事前準備をしっかりとしておいてください。


◇長期休暇の上手な過ごし方◇
メンタルヘルス対策支援促進員 勝見 九重

 年末から続く、長期休暇をみなさんはどのようにお過ごしでしょうか。
日頃忙しくされている方ほど、長い休みには「片づけをしたい」「日頃行けないところへ出かけたい」などいろんな計画を立てられているかもしれません。
 でも、せっかくの長いお休み、だからこそ毎日の事なのに疎かにされがちな「睡眠」について今一度学んでみませんか?
 快眠アドバイザーの山本恵一さんの著作『“睡眠満足度”があなたの年収を変える!眠りの技法』(サンクチュアリ出版)によると、なんとベッドや枕の位置が快眠にとても重要なのだそうです。
 ちなみに私の研修でも良い睡眠について「朝はかならずくもり空でもカーテンを開けて、朝の光を浴びましょう」と話します。なので、ベッドはカーテンの近くが良いのでは?と思っていました。ところが快眠アドバイザーの山本恵一さんの著作によると、「ベッドや枕の位置は窓際・壁際から離す」のが正解なのだそうです。それは、太陽はいつも同じ時間・場所にあがるわけではありません。ですから、いつも同じ時間に起きて登校や出勤をしている生活なのに違う時間の太陽の時間を浴びてもよくないことがわかります。
 そこで、「ベッドや枕の位置は窓際・壁際から離す」ことが必要なのです。ベッドを窓側から離すとこで太陽の光に起きる時間を左右されなくなります。できれば遮光カーテンを利用してみてください。もちろん、起きるための目覚まし時計や携帯のタイマーなどのセットはお忘れなく。
 もう一つは「寝だめ」について。睡眠は疲労回復にとって一番大切なことですよね。だからと言って休日に余分に寝だめをしても、それは体内時計を狂わせ、疲労を増大させてしまう行為なのです。
 実は、週末を遅寝・遅起きで過ごした場合、仕事のパフォーマンス低下や疲労化を招くといった悪影響が翌週の水曜日まで続いてしまうという研究結果もあります。
 せっかくの年末年始の長期休暇でも、いつもと同じ生活時間を余裕をもってさわやかに過ごしてみませんか?年始明けの仕事のパフォーマンスも上ることを期待して。

厚生労働省による健康づくりのための睡眠指針 2014
~睡眠 12 箇条~
1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
11.いつもと違う睡眠には、要注意。
12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。



◆産業保健に関する各種研修会のお知らせ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/5semina/semina-s.htm
 ※1月~3月開催の研修会を掲載しています。奮ってご参加下さい。
 ※当センターが実施する「産業医研修会」について、付与できる単位は
  「生涯研修」のみとなります。
  「基礎研修」を受講される方は、京都府医師会主催の研修会を
   ご覧ください。
  http://www.kyoto.med.or.jp/member/sports/index.html

◆京都産業保健総合支援センターホームページ◆
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◆産業保健トピックス◆
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発行人:森 洋一  編集人:吉岡 宏修  info@kyoto-sanpo.jp
編集協力:京都産業保健総合支援センター産業保健相談員
発行/配信:京都産業保健総合支援センター http://www.kyoto-sanpo.jp