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京都産業保健総合支援センター メールマガジン164号 2015/4/1
ホームページ:http://www.kyoto-sanpo.jp
発行:京都産業保健総合支援センター 所長 森 洋一


◇京都産業保健総合支援センター ホームページ情報◇

1) 平成26年度リスク評価結果等に基づく労働者の健康障害防止対策の
  徹底について
                            <2015.3.2 UP>

2) 「第361回産業衛生研究会」のご案内                 
                            <2015.3.26UP>



産業医学相談員 長井 苑子

 産業医の資格を有してはいるが、多くの事業所や工場を視察したわけでもな
く、産業衛生委員会で種々の課題を討議してきたわけでもない。たまに産業推
進センターで相談にのっている。職場の多くの課題はメンタルなものが増えて
きていることは、どこにおいても強調されている。間接的にうかがっていても、病気もちの勤務者の休業と処遇、職場での小さいけれど、気になる不満への対応などなど、時間もいるし、経験もいる相談ごとが多そうである。
 最近の新聞では、経済学者が、昔の格差社会とは、ずいぶんと異なった格差
社会の問題を認識しての対応が必要であると説いていた。昔は、高等遊民とい
う親がかりで好きな勉学や遊興に打ち興じての人生をおくっていた人たちもい
たのである。そのなかでの貧困層との対比であった。しかし、現在は、一見、
便利で安価なものでも格好よく見えるという時代の中の格差であり、うっかり
すると格差そのものが見えにくい。若者の就職したくても見つからないままの
希望まで感じられない中の貧困、高齢者の人生を一生懸命生きてきたのに、老
齢期に僅少な年金だけでは、人間らしい生活もおくれないままに弱っていくと
いう悲惨な貧困と幅が大きい。考えてみれば、憲法のうたう基本的人権が、老
いも若きも奪われているような中での格差社会である。これで、インターネッ
トを通じて、多くの情報が安易に得られることとなれば、バランスを失して過
激思想に影響されたり、必要以上に暴力的なものに刺激されてしまう傾向を、
説得力をもって軌道修正させにくい状況がある。どうすればいいかと、大きな
社会的問題にはふみこまれないし、その力もないが、職場での問題の解決もう
まくしないと、悲惨な格差をうんでしまう、失職して、落ちていく人間を救う
こともできない。私の上司は、日本で賃金が増加していった上向きの時期に、
すでに、そのまま行くと、国際競争力を失うこととなる(同じ労働をアジアな
どでもっと低賃金でできるので雇用がやがて奪われていく)ことに対応しなか
った日本についてコメントしている。高齢者を生活保護に追い込まずに、年金
を増加する対応はできないのか?そうできれば、若い世代の雇用の場も増える
から、深刻な社会問題もすこしは改善されはしないか?誰が、これらの問題に
糸口をつけてくれるのか?
 産業医もこれらの問題を共通に認識し職場問題への対応もできるよう社会学
的想像力を必要とする資格、立場であろう。種々の職場での産業衛生への認識
の改善、産業医自身の社会的視点、臨床医とのうまい連携などが山積みされて
いる。



産業保健相談員 辰巳朋子

 4月は、始まりの季節。いかがお過ごしですか? 新しく始めることはなかなか難しいもので、いろいろな気分を引きずっていることも多いように思います。そして、この時期の心理相談では、取り残された感をお聞きすることが増えてきます。
 新入社員さんはそろそろ慣れてきておられますか? 「叱られたこと」と「いじめられた」ことが、区別されずに語られることもあり、気になります。若い人から、先輩という存在は、「自分を育ててくれる人ではなく、いじめられるかもしれない人」とお聞きして、戦慄を覚えました。敵かもしれないところから人間関係が始まるのですから、パワハラの課題は、職場の重要なテーマです。
 参考までに紹介すると、「明るい職場応援団」で検索すれば、パワハラに取り組む際に役立つ情報がいろいろ掲載されています。これは、厚生労働省によるホームページで、研修資料や裁判事例、実際の企業の取組み紹介など盛りだくさんです。無料セミナーの案内もあります。
 京都産業保健総合支援センターでも2月に、パワハラをテーマにした研修をしました。職場の気になる関係について、一方が潰れそうになっているのを心配して見守り方々が、どのようにこの問題に取り組むにはどうしたらよいか、話合いを通して考えました。参加された方の業種は様々でしたが、人についてのお話として盛んな意見交換となりました。
 現在、職場にいる先輩方が若輩だった頃は、面倒を見てくれる先輩がいて、一緒に話す機会もいろいろあったことでしょう。そんな時にも、「これはやりすぎじゃないか」と感じた先輩方の言動はありませんでしたか。そのあたりから、職場での振る舞いについて、現在の若輩達と語り合ってみてはいかがでしょうか。
 


◇「さまざまなストレスコーピング」◇
メンタルヘルス対策支援促進員 湯口 恭子 
 
 陽の光が優しく、穏やかな光を放つ春がやって来ました。出会いと別れの季
節は時に、慌ただしく、忙しく過ぎていきます。新しい仕事、新しい環境、新
しい人間関係は新鮮で楽しい反面、緊張や不安も高まります。「忙しい」とい
う言葉が「心を亡くす」と書くように、気づかない内に、心も消耗しているの
です。
 心を消耗させる「ストレス」については、これまでも多く紹介されています
が、みなさまはそんな時、どのような対処をしていますか?この慌ただしい季
節を気持ちよく過ごすために、ここではストレスの対処行動法(ストレスコー
ピング、単にコーピングとも呼ぶ。)をご紹介しておきましょう。下記は「メ
ンタルヘルスマネジメント検定試験公式テキストⅠ種マスターコース」より、5つの分類がなされているものです。
(コーピングの分類方法は研究対象や方法論、報告等によって異なります。)

●さまざまなストレスコーピング
(1) 問題焦点型コーピング
問題焦点(あるいは問題中心)型コーピングとは、直面している問題に対して、自分の努力、あるいは周囲の協力を得て解決したり、対策を立てるような対処行動を指します。また、自分の能力ではどうにもならない場合、担当を変わってもらったり、配置転換をしてもらうような回避行動も広い意味での問題焦点型コーピングに含まれます。
(2) 情動焦点型コーピング
情動焦点(あるいは情動中心)型コーピングとは、すでに失敗して取り返しが
つかない場合や、人を亡くした場合等、今となっては解決や対応のしようがな
く、どうにもならない場合に、怒りや不満、残念な気持ち、悲しみ等の感情を
上司や同僚、友人、カウンセラー等に話して表出し、聴いてもらうことによっ
て気持ちの整理をつける感情発散型の対処行動と、不満や怒り、悲しみ等を誰
にも話さず自分の心に抑圧してしまう感情抑圧型コーピングの2つの型があります。前者のほうが問題解決につながりやすく、精神健康に対しては良い方向に働き、ストレス関連疾患の発生を予防する効果があるとされています。
(3) 認知再評価型(発想転換型)コーピング
認知再評価型コーピングは、直面している困難な問題に対して、見方や発想を
変え、良い方向(前向き)に考える、あるいは距離を置く等、認知の仕方を再検
討して新しい適応の方法を探すような対処行動を指します。前向き思考、ポジ
ティブシンキング等とも呼ばれています。 
(4)社会的支援(探索)型コーピング
社会的支援(探索)型コーピングは、問題に直面した時、上司や同僚、家族、友
人等に相談したり、アドバイスを求めたりする対処行動で、問題解決行動につ
ながる場合と、つらい状況を信頼できる人に話し、慰めてもらったり励まして
もらったりすることで気持ちが楽になり、心理的安定を得られるようになる情
動焦点型コーピングにつながる場合があります。
(5) 気晴らし型コーピング
気晴らし型コーピングは、運動、趣味、レジャー、カラオケ、温泉浴等、いわ
ゆるストレス解消法と呼ばれるもので、気分転換、リフレッシュ等日常の苛立
ち事によるストレス解消に対しては、有効な対処行動です。
その他、リラクゼーションの技法、ヨガ、座禅等もストレス軽減法として有効
です。
出典:メンタルヘルスマネジメント検定試験公式テキストⅠ種マスターコース
                   (第2版第5刷発行)大阪商工会議所

 人はつい自分が普段行っているコーピングばかりに偏りがちですが、上手く
組み合わせることで、ストレスを解消しやすくなるメリットがあります。
 また、困難な問題を整理して優先順位をつけ、取り組みやすい問題からひと
つずつ片づけていくことで、心の負担も軽くなるでしょう。
 もしかしたら、自分のコーピングにもクセがあるのかもしれません。さまざ
まなストレスコーピングを知っておき、これからの新しい季節、上手にストレ
スと付き合っていきませんか?


◇転任のご挨拶◇
 副所長 真下 尚之
 
 4月1日付け人事異動により、京都労働局労働基準部健康安全課から副所長として転任してまいりました。前任の吉岡副所長同様、よろしくお願いいたします。
 さて、厚生労働者が公表した「平成25年労働安全衛生調査」の結果を見ますと、労働者の健康をめぐる状況については、例えば、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者が半数を超えており、精神障害を原因とする労災認定件数が依然として高水準で推移している等、労働者のメンタルヘルス対策の重要性は引き続き高く、また、近年、我が国における過労死等が大きな社会問題になっています。
 このような中、最近の社会情勢の変化や労働災害の動向に即応し、労働者の安全と健康の確保対策を一層充実するため、「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が平成26年6月25日に公布されました。
 改正項目は7項目あり、項目ごとに施行日が異なりますが、中でも、「化学物質についてリスクアセスメントの実施の義務化」及び「ストレスチェック実施等の義務化」については着目されている状況です。
 当センターでは、労働者のからだと心の一体的な健康管理や作業環境管理、作業管理を含めた総合的な労働衛生管理の進め方等についての相談等を一元的に受付ける窓口として機能を発揮できるよう取組んでまいりたいと考えております。
 関係機関、関係団体の皆様には、当センター事業の円滑な運営に引き続きご理解とご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。



◆産業保健に関する各種研修会のお知らせ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/5semina/semina-s.htm
 ※4月~6月開催の研修会を掲載しています。奮ってご参加下さい。
 ※当センターが実施する「産業医研修会」について、付与できる単位は
  「生涯研修」のみとなります。
  「基礎研修」を受講される方は、京都府医師会主催の研修会を
   ご覧ください。
  http://www.kyoto.med.or.jp/member/sports/index.html

◆京都産業保健総合支援センターホームページ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp

◆京都産業保健総合支援センターご利用案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/3riyo/riyo.htm

◆相談のご案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/4soudan/soudan.htm

◆図書・教材のご案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/6tosyo/tosyo-a.htm

◆産業保健トピックス◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/8topi/topi.htm

◆メンタルヘルス対策支援サービスのご案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/mental/index.htm

◆メールマガジン(バックナンバー)◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/index2/merumaga/merumagaframe.htm

◆東日本大震災関連情報◆ http://www.rofuku.go.jp/higashinihon_daishinsai/tabid/422/Default.aspx


発行人:森 洋一  編集人:真下 尚之  info@kyoto-sanpo.jp
編集協力:京都産業保健総合支援センター産業保健相談員
発行/配信:京都産業保健総合支援センター http://www.kyoto-sanpo.jp